少し前までは編成両数を増やしたり、運転本数自体を増やすダイヤ改正が多かった。
それでも駅で勤務していると必ず
「前の発車時間がちょうど良かったのに、ダイヤ改正で時間がずれて早起きしなきゃいけなくなった」
「連絡が悪くなって前より所要時間が伸びた」
「本当に混んでいる列車は(編成が)短くなって、前から混んでいない列車は(編成が)長くなったが、お前のところの会社は何を考えているのだ」
この手の苦情をもらっていました。
車掌として乗務している時にも文句を言われることがありました。
これまで生活リズムの一部として列車を使っていた人からすれば、ダイヤ改正によって時間がずれるということは喜ばしいことではないのでしょう。
最高速度の変更や駅間運転時秒の見直しによって、主要駅間の所要時間が短くなったことを会社は大々的に宣伝しますが、その反面中間の駅から利用している人にとっては、発車時間が早くなることで迷惑を被ることもあるわけで、会社と利用者との思いのギャップって意外と大きかったりします。
コロナ禍による利用者数の減少に直面した鉄道各社は、編成両数の減少や運転本数の減少を伴うダイヤ改正を行うようになってきました。
本数増や編成両数増でもクレームをもらうことが多かったのに、今度は真逆へのダイヤ改正が本格化してきたわけですから、駅勤務や車掌として乗務していると以前にも増してクレームをもらっているかもしれません。
JR日光線鹿沼駅でのダイヤ改正後の混雑がひどいとネットニュースで見ましたが、新しい労働組合の組合員が鹿沼駅前で「旅客軽視のダイヤ改悪だ」と訴えたり、ビラを配るなどの行動を行ったとか。
私自身の経験ですが、ダイヤ改正後の一時期は車掌から見ても混雑がひどくなったと感じる場面に出くわすことが多いですしね。
4月の学校の新学期シーズンはどうしても混みやすいのですが、ちょうど今頃、GWを過ぎたあたりと夏休み終了後にどの程度混んでいるのかによって、会社側が想定した通りの推移となっているのか、それとも外れだったのかを見ることができます。
仕事をしながら思っていたのですが、鉄道業って変わった商売ですよね。
鉄道業の主力商品ってダイヤです。
ふつうはお客さんの動向に合わせた商品をラインアップするのですが、鉄道ではお客さんの動向も少しは取り入れるけど、大部分で会社側の思惑が優先されている、そんな商品を提供しています。
そして一部のお客さんはクレームを入れてきますが、大半のお客さんはその商品を文句も言わずに利用するのです。
都市部などごく一部の区間を除いて、ライバル企業が無いから通用するわけです。
結局お客さんの側が、次の電車は混んでいるから1本前とか1本後を利用することで自衛する。
だからGWの後や夏休み後になると、ダイヤ改正によって混んでいた列車が多少の落ち着きを見せてくる。
その様子を見越して鉄道会社はダイヤ編成を行うわけで、なんて勝手な商売がまかり通っているのだろうと思っていました。
でもそのくらいのことをしないと、今後はJR東日本も経営上難しくなるのかななんて思ってみたり。
もう安定した業界ではないことは確かなのかもしれません。