私が在籍していた乗務区では、ある特定の支線ばかりを乗務する乗務員がいました。
本来は交番表の順番通りに乗務しなければいけないですし、勤務指定表(出勤簿)も交番表どおりに仕業番号順に氏名が掲載されていました。
ところが乗務員同士での仕業の交換が認められていて、特定の支線ばかり乗務することが可能になっていました。
このままではだれがどの仕業番号を担当しているかが分かりませんから原本の出勤簿とは別に、仕業の交換が行われた後の出勤簿も作られていました。
特に年を取った乗務員は本線を嫌がる傾向が強く、支線の乗務員休憩所はまるで老人ホーム状態(笑)
ごくたまに若い乗務員がそういった支線へやってくると、休憩所では座る場所はないししゃべる相手もいない。
それにベテランばかりだからお茶くみしなきゃいけないしで、乗務中のほうが気持ちが休まる休憩中にみたいに感じるほどでした。
私も車掌の時に一度そんな支線へ乗務しに行く羽目になったのですが、その当時の支線ばかりに乗務していた乗務員の方々ってかなり人相も口も悪いし、話している内容はパチンコや競馬や競艇の話と
「こないだ助役になりよった××、あいつ態度悪いからシメなあかんで」
って、マジで反社会的勢力の事務所に何も知らずに入っていったみたいな感覚になりましたよ。
本線だってシフト表を勝手に変えて乗務していました。
例えば
15時出勤で15時20分からホームで交代し各駅停車で1往復し、そのあと1時間以上休憩があるシフト(仕業)と
15時50分からホームで交代して各駅停車で1往復して勤務終了となるシフト(仕業)があるとします。
担当する各駅停車を変えてしまい、15時出勤の乗務員はもう少しゆっくり会社にやってきて15時50分から乗務を開始し、本当は15時50分から乗務する乗務員は15時20分から1往復して30分ほど早く退勤しちゃうのです。
でもこのままでは15時出勤の乗務員は出勤簿上では遅刻扱いになるので
「各停をひねってるから、15時出勤の乗務員を出勤したことにしといて」
と、代わりに出勤管理の助役に伝えればそれでOKという、無茶苦茶なことが毎日行われていました。
出勤管理している助役も乗務員時代は同じことをやってきているから偉そうに言うこともできず、悪しき慣行が延々と続けられていました。
昔は交番表や仕業表があったとしても、誰かが乗務していれば別にシフトと違っていても問題がないという意識が強かったですね。
会社側だって、ダイヤどおりに電車が動いていれば特に問題はないわけだし。
でも私が運転士になってしばらくすると禁止されましたけどね。
シフト表の中身を乗務員が勝手に変えられないよう休憩時間が詰められたり乗務量が大幅に増やされましたから、禁止しなくてもできなくなったんですけどね。
それとある乗務員が犯罪を犯して警察に捕まった際に、勤務時間の確認を行うために警察が出勤簿を確認したのですが
「なぜこの会社では同じ日の出勤簿が複数あるのですか?」
って突っ込まれて本社側で問題になり、仕業の交換も禁止になったのでした。