塗油器は名前の通り油を塗る機械です。
下記の画像はレールに乗っかている鉄道車両の車輪です。
ピカピカに光っている部分が車輪の踏面で、この部分に接しているレールの上部もピカピカに光っています。
車輪がレール上を転がることで、車輪もレールも磨かれているわけです。
そして車輪に縁が付いているのもお分かりいただけると思いますが、ここがフランジと呼ばれる部分ですがここもピカピカに光っています。
ここはレールの内側と接するわけですが、特にカーブだったり転轍機(ポイント)を通過するにはレールに強く接してしまいます。
踏面は進行方向に向かって回転しながら接しているために、あまり摩擦は起こりませんし軋むような音も発生しません。
ところがレールの内側に接するフランジは、車輪が縦に回転しているのに横が接することで大きな摩擦を生じ、さらに大きな軋み音も発生します。
この摩擦を軽減させて軋む音を低減させるために、レールの内側に油を塗るのです。
通常の曲線部は塗油器という装置を設置しており、車輪が塗油器の押し釦のような上を通過すると油が噴射する仕組みになっています。
油の補充を定期的に行う必要はありますが、手間を考えると楽ということになりますね。
ポイント(分岐器)用の塗油器も開発されたと聞いたことがありますが、私が勤務していた会社には装備はされていなかったかな。
なので駅の係員が定期的にトングレールや床板などに塗油していました。
塗油器に補充する油は冬と夏とでは粘度の違う油を使っていたようですが、それ以上に油の噴出量の調整を乗務区から施設の担当課のほうへ頻繁に連絡していました。
たまにサラサラの油が大量に吹き出してしまって、ブレーキを使っても油で滑って利きが著しく低下したり、派手に空転することもありましたから。
駅の係員によるポイントへの塗油でも何度か怖い目に遭ったことがあります。
始発駅のポイントへの塗油作業をしていたのですが、出発してすぐに派手な空転を起こしてオーバーロード。
幸い車両の故障や停電とはならずそのまま運転を継続したのですが、次の駅へ停車すべくブレーキをかけたけどほとんど利かない。
非常ブレーキを入れたけど10mほどホームから飛び出して停車。
その次の駅でも乗務員室だけがホームから出て停車。
あまりにひどいので始発駅のポイントの油を拭き取るように要求したのですが、レール上には真っ黒な油がべたべたに付いていたとか。
その車両も車庫のある駅で車両交換を実施し、車両課が入庫した車両を確認したところ車輪にもブレーキシューにも油が大量に付いていたと。
「こんな状態でよく運転してきましたねと、車両課の係員があきれながら言ってましたよ」
と私が乗務区に戻った際に助役に言われました。
今回は塗油の基礎知識みたいな感じで終わります。
塗油器や塗油作業についてはほかにも話があるので、またの機会に。。。