人身事故で列車運転見合わせが長引く原因を作った事故から20年

ちょうど20年前の2002年(平成14年)11月6日に発生した「東海道線救急隊員死傷事故」

概要は以前に「人身事故で運転抑止が長引く原因」という記事にも書きましたが、今回はちょっとおさらいです。

 

JR神戸線(東海道本線)塚本~尼崎間の軌道内で遊んでいた中学生が、下り「新快速」に接触して重傷を負いました。

救助のために出動した大阪市の淀川消防署の救急隊員6名のうち2名が、下り「スーパーはくと11号」に接触し1名が死亡し1名が重傷を負った2重の死傷事故です。

私が勤務していた会社とは違い、JRでは最寄り駅の駅員が現場へ赴くことになっていたようで、駅員と運転指令、そして「スーパーはくと」の運転士との連携が取れていなかったことから、「スーパーはくと」は通常の速度で接近して救急隊員が接触するという惨事になったのです。

 

ちなみに私が勤務していた会社では運転士と車掌が人身事故時の対応を行います。

この事故に照らし合わせると、「新快速」の運転士と車掌が重傷を負った中学生の対応を行い、列車と接触しない場所へ移動させます。

そして車掌は現場監視者として事故現場に残り、運転士のみで運転を再開し最寄り駅まで行き、そこで手配をしておいた車掌(または車掌の資格を持つ社員)が乗務する。

現場を通過する全列車に対して徐行指示が出されるとともに、後続の「スーパーはくと」に対しては事故現場での一旦停止の指示が出る場合もある。

私が勤めていた会社でのやり方に照らし合わせるとこんな感じでした。

 

この事故がきっかけで警察及び消防から、人身事故時の運転抑止の要請が出されることになり、警察官や救急隊員は安全に被害者の救護活動が行えるようにはなったのですが、その反面抑止時間が相当長くなることによる、利用者への影響があまりにも大きくなりました。

私が勤務していた会社は警察や消防からの要請になかなか従わず、基本的に事故を起こした列車が停止する時間は10分以内。

それに伴う後続列車の遅延は当然ありますが、事故現場を徐行15Km/h以下で通過することで事故現場での処置と列車遅延を極力抑える体制を崩そうとはしませんでしたが、度重なる警察や消防からの要請によって関西では最も遅く運転抑止するようになりました。

ひょっとしたら関東の各私鉄よりも、警察や消防からの要請を飲むまでに時間がかかった会社かも……

 

事故現場に残された車掌は、乗務区など運転関係の助役が現場に来た時点でお役御免となって乗務区へ戻っていきます。

なお事故現場では車掌は、列車が停車した場所にさりげなくバラスト(砕石)を一個だけ犬走りなどに置いておいて、乗務区の助役に引き継いだり(速度と発見した場所と制動距離が関係してきます)、急汽笛を聞いたり急ブレーキで止まったことを証明してくださる旅客または周辺の通行人を探して、名前と電話番号や住所を聞いておくなどの仕事も行います。

 

私が勤務していた会社では、車掌や運転士の見習時に教習所で人身事故時のマニュアルに沿って教育を受けていましたが、この当時のJR西日本には明確なマニュアルがなかったとされています。

これが原因で二重事故につながったわけですが、今ではJR西日本がもっとも運転抑止する回数が多い会社のような気がします。

警察や消防側から列車を止めろ!危なくて処置ができない!という声が上がるのは当然だとしても、それまでは最低限の抑止と徐行で乗り切っていた他の鉄道会社にすれば、はっきり言って迷惑な話です。

昔は抑止と徐行で全体的には最大で20分程度の遅れで済んでいたのに、この事故がきっかけで2時間の遅延が珍しくない状態になりました。

ちなみに当のJR西日本では、この事故以降意味不明な列車抑止指示がよく出たと言われています。

車内で急病人が出た際にも、その周辺を走る全列車に抑止指示が出たなんて話も聞きました。

 

そのJR西日本はその後も2005年(平成17年)4月25日に福知山線列車脱線転覆事故、そして2017年(平成29年)12月11日には「のぞみ34号」台車亀裂事故を起こしています。

「のぞみ34号」の事故の時は2か月前に私は退職していたので勤務していた会社にどのような影響があったのかは分かりませんが、福知山線列車脱線転覆事故の後は私鉄の運転士だった私でも相当なプレッシャーを受けて運転することになりましたし、この事故以降お客さんが監視するように乗務員室を覗くことが多くなりました。

曲線で少し揺れただけでスピードオーバーしているのではないかとクレームが入るようにもなりましたし。

 

とにかく今全国の鉄道で人身事故時に相当な時間、列車の運転を休止するのはJR西日本のこの事故のせいなのです。

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