5月8日 JR筑肥線の筑前前原駅で同駅発西唐津行き普通電車が、ドアを開けた状態で3mほど転がるトラブルがあった。
同駅はホームドア(稼働柵)も設置しているらしく、ドアが開いたまま3mも転がれば、車両とホームドアの位置がずれて挟まれる危険性もあったかもしれません。
そう思うと列車が停車中に勾配によって転がりださないように、転動防止の措置をしっかり行うことは本当に重要です。
ブレーキがかかっていない状態で勾配を転がり下っていくことを流転と言うそうですね。
これは国鉄(JR)では一般的な言葉でしょうか。
私がいた私鉄では流転と言う言葉は使われていませんでした。
運転士の見習として師匠の指示に従ってハンドルを操作しているとき、各駅ごとにきつく言われるのが転動防止です。
駅に停車させるときはブレーキを全緩めにするのが基本だった会社なのですが、そのままでは勾配のある駅では車両が転がりますから、止まった瞬間に「転動防止!」と指示されるのです。
タイミングよく転動防止を行う場合には、電気指令式ブレーキだと1ステップ、電磁直通だと直通管圧力で1kgf/cm2でも転がることはありません。
ところがタイミングが悪いと同じ駅の同じホームなのに、電気指令式だと3ステップほど入れないと転がるケースがあります。
完全に停止している状態で転動防止を行う場合は、かなり緩めのブレーキでも転がらない。
ところがほんの少しでも動いている状態の場合は、ある程度のきつさのブレーキを入れないと転がってしまう。
また車種によっても全然違っていて、古い鋼製の車体でコイルばね台車の車両だと全緩めにしていても転がらないけど、アルミ車体で空気ばね台車といった軽い車体の場合はかなり転がりやすいといった違いもありました。
実際のところ前方を見ておれば3mも転がる前に気付くはずで、経験から言えば1mも転がると慌ててブレーキを入れるはずです。
回送列車で駅に停車中に転動防止のブレーキが緩すぎたために後方に転がり始めたことがあって、気持ち悪くて非常ブレーキを入れた経験があるのですが、その時の乗組みの車掌に聞いたところでは50cmも動いてはいないと言われました。
こういう経験があったので、私が運転士の見習を就けた時も転動防止はかなり口酸っぱく指示をしていました。
それも必ず電気指令式では3ステップ、電磁徳通の場合は2kgf/cm2は見習に入れるように指示をしていました。
お客さんが乗降しているときに電車が転がりだしたら、本当に危険ですからね。
筑前前原駅での件は不意にブレーキハンドルを触ってしまって意図せず緩めてしまったのかもしれません。
そして出発まで時間があるからと乗務手帳を見たり行路の確認をしていて、転動に気が付かなかったのかなと、勝手に推測しています。
前方を見ておれば絶対に気付いているはずですからね。
私は出発まで時間があって手帳を見るときなどは、電磁直通の場合は必ず全制動、電気指令式の場合は必ず非常制動に入れていました。
前方から目を離す場合は確実に転動防止を行わないと怖いですから。