鉄道好きの方はよくご存じのことと思いますが、運転士に何かしらの異常が起きた場合に自動的に非常ブレーキが入る装置が備わっています。
JRではEB装置を主に設置していますが、私鉄ではデッドマン装置が主です。
EB装置は1分以上ノッチやブレーキ操作のほか気笛の吹鳴などを行わなかったときに警報ブザーが鳴り、ブザー鳴動後5秒以内にノッチやブレーキ操作、気笛吹鳴などを行うか、ブザーのリセットスイッチを押さなければ非常ブレーキが入るというもの。
デッドマン装置は力行装置(車でいうアクセル)などに取り付けられていて、手を離すと非常ブレーキが入るというもの。
私鉄によっては足踏み式もあるし、デッドマン装置の作動条件がバラバラだったり、会社によって考え方が相当違うようですね。
私が勤めていた会社も私鉄ですのでデッドマン装置が取り付けられていました。
形式によって動作条件が違ったりするのですが、かなり古い車両でツーハンドル式(力行とブレーキが別のハンドル)の場合は力行側に取り付けられていました。
力行装置の上部に取り付けられていて、上から押さえ込むようにして握ります。
力行装置には前後進の切り替えレバーがあって、このレバーによって前進するか後進するかを切り替えます。
このレバーを中間位置(切位置)にしたときはデッドマン装置は働きません。
私が勤務していた会社の古い車両ではレバーが前または後位置にあるときには、列車が停車状態であってもデッドマン装置が働くようになっていました。
会社によっては力行中(アクセルを踏んでいる状態)とか速度が〇Km/h以上の時に動作ということもあるのですが、そこまで厳密に設定して設置するのが面倒だったのでは?と個人的に思ったりしますが。
自分では前後進レバーを中間位置にしているつもりで手を離しちゃうことがあるのです。
なかなか車掌がドアを閉めないのでホームを覗くときに離してしまうことが多かったかな。
古い車両なので制動管の圧力が一気に抜けて非常ブレーキが動作するのですが、それに気付くのは一気に空気が抜ける時の“パシャーーン”という音ですね。
やってしまった!と慌てて力行装置を握りなおして制動管に空気が込められるのを待つわけですが、これが相当長い。
たぶん30秒くらいはかかっていたと思います。
ちなみに駅の停車時秒は日中だと15~20秒が標準だったので、それ以上に時間がかかるからやっぱり長く感じてしまいます。
何が起こったのかを理解している車掌は、制動管が充気されるまでドアを閉めずに待っていてくれます。
非常制動が緩解される音を知っているからですね。
ところが中には関係なくドアを閉めちゃう車掌もいるんですよ。
ドアを閉めて発車合図を送ってくるけど、非常制動が緩まないから発車なんてできないのに。
それに、たいていはなかなかドアを閉めないから何かあったのかなと思ってホームを覗き、その時に手を離してしまって非常ブレーキがかかっているわけです。
心の中では
「お前がダルイから覗いた時に手を離して非常ブレーキが入ったんだぞ!」
なんて頭に血が上ることもあったけど・・・
運転士を26年ほどした間に、たぶん5~6回はやっちゃった思い出です。