JR東日本QRコード利用でチケットレス乗車は「変革2027」そのもの
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JR東日本QRコード利用でチケットレス乗車は「変革2027」そのもの

あくまで個人的な意見

JR東日本が2022年11月8日に発表した、QRコードを使用した新たな乗車サービスの導入。

Suicaによる乗車システムが確固たる地位を築いているのですが、それでもQRコードを利用した新た乗車システムの導入もどうしても必要なのです。

都市部でSuicaやICOCAなどの交通系ICカードをごく普通に利用している多くの方からは、なぜ今さらQRコードによる乗車システムなんて必要なのかという声も聞こえてきますが、そこにはJR東日本の今後の戦略が見え隠れしているように思えるのです。

 

 

今後もSuicaサービスの拡充は続く

2021年7月現在のデータではありますが、Suicaは発行枚数8501万枚と鉄道系のICカードでは断トツ。

2位のPASMOの4024万枚、3位のICOCAの2518万枚と比べると2~3倍以上の発行枚数を誇ります。

鉄道ファンのクレジットカードのりばから出典

一人で複数枚所持していることも多いので発行枚数と利用人数が同じではありませんが、それでも日常的に鉄道を利用する人の必須アイテムになっていることは間違いありません。

チャージしておけば切符を購入しなくてもよいし、定期入れから出して自動改札に投入する必要もない、交通系ICカード全国相互利用サービスによって会社ごとにICカードを用意する必要もないなど、この利便性が当たり前になった今ではもう後戻りなんて無理です。

JR東日本も今回QRコード利用による新たな乗車サービスの位置付けは、Suicaを持っていない人でもチケットレスサービスによる乗車ができるようにするためと言っており、これからもSuicaがJR東日本のサービスの中心であることに間違いはなく、あくまでQRコード利用による乗車は補完的な位置付けにほかならないのです。

 

 

特急などの乗車時は今でもきっぷを持つ人の方が多い

日頃から出張などで新幹線や特急列車をよく利用する方はチケットレスサービスをうまく活用していると思いますが、年に一度新幹線など長距離列車に乗るか乗らないかといった程度の方のほうが世の中には多いと思います。

夏休みやお正月休みに家族で利用することはあるけど、一人で乗車することはないという方の方が多いんじゃないのかな。

例えば新幹線のスマートEXサービスを家族全員で利用するには、家族一人一人のICカードを用意する必要があります。

年に1~2回の新幹線利用のために、わざわざデポジット料金を払ってICカードを用意するご家庭は少ないのではないかな。

もちろん通学などで利用しておれば良いけど、小中学生の分をわざわざ用意はしないでしょう。

これはJR東日本の「えきねっと」を利用したチケットレスサービスでも同様で、手持ちのICカードとの紐づけが利用人数分必要です。

何も家族での移動だけではなく一人で移動する場合でも、用事で新幹線に乗るのだが普段は電車にはあまり乗車しないのでSuicaなどのICカードは持っていない、そういった方は従来通りの乗車券や特急券を受取って乗車するしか仕方がない。

結局こういった普段はICカードの必要性がなく持っていない人を、いかにしてチケットレスで乗車してもらえるようにしていくか、これを解決するためにQRコードを使った乗車サービスを行うとしているわけですね。

 

QRコードなんて歳をとった人が使えるのか?と考えがちですが、PayPayを筆頭に様々なQRコードを使ったスマホ決済が定着しており、スーパーのレジなどを観察しておればわかりますが、意外と年配の女性でもスマホ決済を使いこなしていますよ。

QRコードによる決済という垣根はかなり低くなっており、JR東日本も今の状況を見た限りそれほどQRコードでの乗車にアレルギーを持った人はいないと踏んだのではないかな。

 

 

最終的には磁気乗車券類の全廃が目標?

みどりの窓口を激減させて高機能の券売機を導入する動きは都心でも見られるようですが、券売機があるということはまだこれからも紙の乗車券類は存続していくのでしょう。

ただ新幹線を含む回数券の廃止をはじめ、紙の乗車券類の発行をできるだけ少なくしていきたいという思惑は当然各鉄道会社が持っています。

券売機を減らすことができれば維持管理費の低減が図られます。

自動改札から磁気の乗車券類の情報を読み書きする磁気ヘッドなど、きっぷ関係のパーツが無くなれば自動改札の導入費は相当安くなりますし、保守点検など維持管理費も相当抑えることができます。

それだけではなく、これらに関わる駅員の配置人数を減らすことができるので人件費も相当浮くことになります。

また私鉄の中には磁気定期券の発行をとりやめ、定期券はICカードに一本化する動きも活発化しています。

つまりは乗車券や特急券だけではなく、定期券も含めた磁気乗車券類の全廃が各鉄道会社の目標になってきていると思うわけです。

今後はおそらくICカードを導入している線区では、磁気乗車券の廃止とSuicaなどのICカードが無ければ乗車できない(利用しにくい)体制へと移行していくでしょう。

そのためにはさらなるICカードエリアの拡大が必要です。

ただし赤字ローカル線の存廃問題がクローズアップされるなど、必ずしも地方線区のすべてにICカードエリアを広げるのは収支状況から考えても無理があります。

そこでQRコードを利用した乗車券類を発売することで、高価なICカード対応の自動改札の設置を抑制していくことを考え出したのでしょう。

ただ近距離の乗車にQRコードを利用することは今のところ考えてはいないでしょうから、地方線区ではJR西日本が導入している車載型IC改札機の活用が考えられます。

Suicaの普及とエリアの拡大、そしてチケットレス乗車の推進、それに伴って各鉄道会社が頭を抱える固定経費の削減が期待できる今回のQRコードによる新しい乗車サービス。

鉄道業が今後も生き残るための大きな作戦の一つになると思います。

それでも磁気乗車券類の全廃はまだまだ先のことになるでしょうね、SuicaなどICカードでの鉄道利用率が100%になれば可能ですが。

 

 

誤解が多いというか先走りすぎというか…

JR東日本がQRコードを利用した乗車サービスを発表してい以降、かなり多くの記事がネット上で配信されました。

  • きっぷとSuicaとQRコードが混在して、将来どの方式がスタンダードになるのか定まっていない。
  • JR東日本がQRコードを導入しても、乗り換える私鉄駅が導入しなければ手間が増すだけ。
  • 鉄道事業者の中にはクレジットカードのタッチ決済の実証実験を行っており、どの方式がスタンダードになるのかが分からない状況が続く。
  • どうせQRコード乗車サービスを行うのならば、広く普及しているPayPayを利用できるくらいの簡便さが必要。
  • NFC/FeliCaによるSuicaと比べてQRコードは読み取り速度が遅く改札で渋滞してしまう。

将来は今以上にICカードによる乗車がスタンダードになります。

それも今のようなカードタイプではなく、モバイルSuicaやモバイルPASMOのようなスマホを利用した乗車スタイルがスタンダードになります。

スマホではなくアップルウォッチのようなものか、はたまたさらに新しいタイプになるかもしれませんが。

 

私鉄は当分の間はQRコードによる乗車は対応しないと思います、というかその必要性がありません。

今と同じようにSuicaやPASMOなどで乗車できるし、利用者もわざわざICカードからQRコードには移行しませんから。

地方から東京へ出てくる際の乗車券って、今でもJR内で完結となるものが普通。

大阪市内から東京都区内の私鉄の駅までのきっぷなんて見たことが無いけど、そんなのあるの?

 

クレジットカードのタッチ決済による乗車サービスですが、導入すれば便利だとは思います。

ただしJR東日本のようにSuicaの普及率が高い事業者は、おそらく導入には否定的になるのじゃないかな。

これだけ広範囲に普及したシステムに、さらにクレカによるタッチ決済に対応させるのは費用面でどうなのかなと思うし。

訪日外国人の利用を見越せば導入もあり得るかもしれないけど、そういった人に対してもQRコードによる乗車サービスを推進するでしょう。

一過性の利用者にはQRコード、頻繁に利用する人にはSuicaで棲み分けを図るのが合理的だと思うし。

 

PayPayなど他の決済業者のQRコード決済を活用する方が便利ではありますが、それもしないです。他社のシステムを利用することで手数料が発生することは避けるでしょうから。

こんな柔軟な発想ができれば、全国すべての鉄道会社がSuicaで統一して導入していたでしょう。

私鉄は地区ごとにかたまってはいるけど、JR各社でバラバラだし。

関西なんて導入費用が低いからと言ってポストペイのPiTaPaを導入したほどですしね。

 

たしかにQRコードの読み取りはスーパーやコンビニのレジで見ていても遅いと感じます。

朝のラッシュ時間帯に利用者がみんなQRコードを利用して自動改札を通過しようとすれば、それはとんでもない大渋滞が発生するでしょう。

でも改札のシステムの主役はこれからもNFC/FeliCaを利用したICカードです。

あくまでQRコードによる乗車はICカードを持っていない、普段あまり鉄道を利用しない人向けのチケットレスサービスですから利用者数はそう多くはないでしょうから、改札で渋滞ができることは考えにくい。

近距離の乗車にまでQRコードの導入は今のところ考えにくいというか、導入しないでしょうし。

 

 

すべて「変革2027」実現に向けたプロセス

 

2021年1月に発表された「変革2027」の新たな数値目標の設定によると

2022 年度目標
(2018 年7 月公表)
2025 年度目標
(2021 年1 月公表)
自社新幹線のチケットレス利用率 50% → 70%
えきねっと取扱率 設定なし → 60%
モバイルSuica 発行枚数 設定なし → 2500 万枚
Suica 等交通系電子マネー利用 3 億件/月 → 5 億件/月
「JRE POINT」会員数 1,600 万人 → 2,500 万人

JR東日本の新幹線利用者のうち70%をチケットレス乗車に、ICカード利用者数を月に5億件に、えきねっと取り扱い率を60%に、JREポイントの会員数を2500万人に、そしてモバイルSuicaの発行数を2500万枚に。

この目標達成のためにチケットレス乗車のさらなる推進と、Suicaの一層の普及が必要になるわけです。

これらの数値を見ても分かるように、すぐにすべての鉄道利用者をチケットレス乗車へ移行できるとは考えておらず、まずはその入り口としてQRコードによる乗車とそれを利用するために「えきねっと」の利用者数を増やし、そしてJRE POINTの会員数を増やしていくという、すべてをJR東日本のサービスだけで完結させていくのが大目標ということになります。

2022年8月に話題になった、鉄道事業の社員4000人削減というものも「変革2027」での目標となっている、鉄道事業以外の分野での収益の向上(2027年度には鉄道の収益が全体に対する割合で6:4に、将来的には5:5に)とクロスしてくるのです。

その一環として今回のQRコードによる新しい乗車サービスがあるのです。

4000人削減という発表に対しても「一貫した経営戦略を持つJR東海と比較されるべき」なんてコメントをYahoo!ニュースに投稿したフリーライターがいますが、これもすべてはJR東日本が目標として定めた「変革2027」に沿ったものであり、あまりにもミクロの視点でしか物事を見ていないのだなと感じました。

少なくとも私が在籍していた私鉄ではかなり昔から、駅員や乗務員の多くが不動産や小売業へ配置転換をされていますけど。

 

ただJR東日本の思惑通りに進めることができるのかは未知数です。

でも会社として一定の方向を向いて進んでいることは確かだと思います。

Suicaのさらなる普及と、QRコードによるチケットレス乗車の開始。

そのすべては鉄道にかかる経費をいかに抑え、いかに収益構造を新たにしていくか。

結局はこの一点なのでしょう。

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