日本人の旅行の定番と言えば「温泉旅行」でしょう。
昭和天皇もご宿泊された福岡県の老舗旅館「大丸別荘」で発覚した、ずさんな温泉の管理体制。
老舗旅館だから安心という勝手な信頼感、旅行予約サイトのクチコミ、温泉関連のネット記事やテレビでの報道など、さまざまな媒体によって信じ切っていた利用者をあざ笑うかのような仕打ち。
でもこれは老舗旅館「大丸別荘」だけの問題ではなく、日頃から踊らされて動く消費者側の問題でもあるような気がします。
レジオネラ菌による温泉での死者も
昭和天皇もご宿泊されたことがある、慶応元年(1865年)創業の老舗旅館「大丸別荘」
同旅館を含む複数の施設に立ち寄った福岡県外の利用者が体調不良を訴えたことで、2022年8月に筑紫保健福祉環境事務所が検査を行ったところ、大浴場で福岡県の条例の細則で定める基準値の約2倍に相当する菌が検出された。
ところが同旅館はこの検査の際にお湯の交換頻度や塩素注入は適正だと説明し、さらに2022年10月の同旅館による自主検査では菌は基準値以下だったと県に届け出た。
しかし、2022年11月の福岡県の再検査では基準値の最大3700倍ものレジオネラ菌を検出した。
昨年11月に県は把握していたのに、なぜすぐに営業停止などの処置を行わなかったのかも疑問ですし、今になって急に騒ぎ出したのかも疑問です。
さらに詳しい原因調査を行っていたからかもしれませんが、これだけの数値が出た以上は即営業中止にすべきだっただろうと思います。
温泉でのレジオネラ属菌による死亡例は意外と多く、2017年には広島県三原市の「みはらし温泉」でレジオネラ菌による集団感染が発生し、患者数55名のうち1名が死亡する事件も起きています。
このときのレジオネラ菌の検出量は基準の11倍だったそうですから、3700倍もの多量の菌が検出された「大丸別荘」でよく死者が出なかったものです。
温泉の見た目や浸かった感じでは分からないために怖いレジオネラ菌の感染。
でもいくつか引っかかる点があります。
宿泊予約サイトでのクチコミは高評価だったが
じゃらんでは総合評価4.4
楽天トラベルでは総合評価4.61
Googleでのレビューは4.4
※いずれも2023/02/25現在の数値
老舗旅館という〝金看板〟を掲げていたことからそれだけでも信用され、さらに宿泊予約サイトでの高評価を最近は特に重視する傾向から、この旅館がまさかお湯を年に2回しか替えていない、超ずさんな経営を行っていたとは誰も想像できない。
でも私は昔の苦い経験から、ネット予約サイトに記されている〝クチコミ〟というものを一切信用しなくなりました。
2004年ごろだったと記憶していますが、和歌山県・潮岬周辺で宿泊施設を探していたところ、クチコミが大変良くて掲載されている宿舎の写真も大変きれいな、コテージ風の宿だった。
夏休み期間中だったので家族で2泊して20数万円を支払うことになったのですが、コテージ風の建物はどう見ても掘っ立て小屋か倉庫風。
玄関周辺には小さなキノコがびっしりと生えており、口コミで謡っていた海なんて全く見えない眺望の悪さ。
食事は夜はバーベキューだが肉はお世辞にも美味しいとは言えない代物だったし、朝は薄いパンにキュウリとハムを挟み込んだだけのサンドイッチで、これならばコンビニで買う方がはるかにマシだと家族で言い合ったほど。
その数年後には台風?の直撃で壊滅状態となって廃業したようですが、そりゃあんな小屋なんてちょっと強い風が吹けばそりゃ吹き飛ぶだろ、って感じでした。
宿の名前を忘れた……
評価値も高くて、会社の同僚も泊まる気まんまんだったらしいのですが、私が撮った写真を見て宿泊をやめていましたからね。
これは極端な例かもしれませんが宿泊予約サイトだけではなく、飲食店の予約サイトでも同様な経験を何度もしていますし、今では〝その場所に宿がある〟〝その場所にお店がある〟という確認のためにしか予約サイトなんて使わなくなりました。
もちろん予約サイトで予約なんてしませんし。
SNSで何か発信すると賛同以上に反発する人が多いのに、なぜか宿泊予約サイトや飲食店予約サイトに書かれたクチコミはみんな信用する不思議さ。
簡単に踊らされすぎじゃないのかな。
自身の正しい評価値を持つべき
もちろん今回のような、浴場のお湯は最低でも一週間に一度は替えるとともに塩素を入れて除菌・殺菌しなければいけないところを、年に2回しかお湯を替えずに塩素の投入もしていなかったなんて、調べようがないことです。
だからどうしてもクチコミの評価を参考にすることは分かるのですが、せめて高評価ではなく低評価を付けたクチコミの内容を吟味することが大事だろうと思うのです。
通販サイトで物品を購入する時でも、必ず低評価の意見を参考にして購入の判断をしています。
だって高評価なんて〝釣り〟だったり〝サクラ〟だったり、プレゼントのためのクチコミ記入も多いですから。
いつもは鉄道関係の記事ばかり書いているのにどうしたの?という感じですが、鉄道においても同じことが言えるのです。
例えば関西だと阪急電鉄の評価が世間では高いですが、それこそイメージだけのモノではないでしょうか。
「大丸別荘」と同じく〝金看板〟だけで判断している人が多いように思います。
高級住宅街を走っていて、電車のシートは高級なアンゴラヤギの生地を使用しクッション性も大変良い。
たしかにそうかもしれないけど、夏はすべての車両が弱冷房車よりも暑いとか、冬はほぼヒーターが効いていないなんて話は、よくツイッターで見かけますよね。
最近は並行して走るJRが様々な大失敗を繰り広げてくれるから、相対的にもともと良いイメージを持つ人が多い阪急の株がさらに上がっているようですが、大雪の際にポイントの雪の挟み込みや凍結防止のために使用する融雪器は、京阪や近鉄では電気式のタイプが使用されていてスイッチ一つで動作できますが、阪急はいまだにカンテラを使用しています。(報道で知って驚きましたが)
人海戦術でどうにか賄ってはいますが、あまりにもこういった部分への投資をお怠っているのもまた事実です。
ホームドアや可動柵の設置状況を見たって、関西の私鉄はJRに大きく後れを取っているのも事実です。
あまりにも多くの人がイメージだけ、クチコミだけ、勝手に抱いている信頼感だけで判断しすぎではないだろうかと思うのです。
クチコミなどを信じて皆に続いておれば楽だし、とりあえず流行に乗り遅れないからそれで良いという人が多すぎるような気がします。
もっと自分の嗅覚を鍛えて、それこそテレビや新聞をはじめとするマスコミや、ネットの予約サイトやまとめサイトの情報をもっと疑って、一度自分で考えることが大事なのになと思うのです。