ちょっと入らせて!

勤務形態もいろいろある駅勤務

私が駅勤務をしていたころの話です。

その駅には改札外に売店がある程度で、特に何もない静かな駅でした。朝や夕方は通勤通学のお客さんでそこそこ賑わうのですが、昼間は閑散としていて、どことなく時間がゆっくり過ぎ去っていくようなイメージがありました。
その日の私の勤務は12時間勤務とやや長い日勤で、2日出勤すると3日分の勤務時間に相当するので、3日目は非番というシフトになっていました。

 

中に入らせて!

朝8時ごろ改札の窓口に座っていた私の前に、60歳くらいの男性がやってきました。
お世辞にもきれいな格好とは言えないいで立ちでしたし、見るからにお酒が入っているなという顔色でしたので、朝からもめるのはイヤだからおとなしくしておこうと瞬時に思いました。

客:「兄ちゃん、悪いけどちょっと中に入らせてくれるかな」
私:「別によろしいけど、中に何かありましたか?」
客:「うん、うどん食べたいから」

 

そう言うと自動改集札機の警報音を無視し、閉まるゲートを突破して改札内へ消えていった。
よくよく考えれば、この駅には立ち食いそば屋などの営業はないわけだし、トイレにでも行きたかったのだろうと考え、特に気にも留めはしませんでした。

 

ごちそうさん!

夕方6時を回り、あと少しで今日の勤務も終わりだなと思いながら、改札の窓口に座っていた私。
一人の男性がホームの方から近付いてきました。

客:「ありがとう、ごちそうさん!」

大声でそう言い放った男性は自動改集札機の警報音を無視し、閉まるゲートを突破して外に出ていきました。
そう、朝うどんを食べたいと言って、改集札機を突破して改札内へ消えていったおじさんです。
うどんを食べたいといって10時間後に戻ってきたのでした。

あとで聞くとその人は、数駅離れたホームにある立ち食いそば屋へ本当にうどんを食べに行くそうです。
そのあとは仕事なのかギャンブルをしに行くのかは分かりませんが、また電車に乗ってどこかへ消えていきます。
そして夕方になったら舞い戻ってきて、必ず
「ありがとう、ごちそうさん!」
と言い放って消えていくそうです。

ちなみにその人が切符や定期券を持っているのかは、管区内の駅員全員が知らないそうです。

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