事故や故障などで運行がストップしたとき、多くのお客さんが真っ先にとる行動とは。
当然ですが鉄道会社の制服を着た職員を捕まえて、いったい何があっていつごろ運転再開するのかといった情報を得ることですよね。
通勤通学のほか様々な用事を行うために鉄道を使って目的地へ行くのですが、その足がいきなりストップすれば目的地へはどうやって行けばよいのかを思案する必要が出てきます。
都市部などでは振替輸送の有無や他社線を使って目的地へ行くことができるのか、他社線を使って目的地へ行くことが難しければ運転再開まで待つか、またはタクシーなど他の手段で目的地へ行くか。
そういった判断もすべてはその鉄道会社の職員から正しい情報を得ることから始まります。
でも
現場で働いている駅員や乗務員にも、正しい情報ってウソみたいに流れてこないものなのです。
まだ鉄道会社へ就職してすぐのころ、駅で現場実習として師匠に仕事を教わっていたころの話ですから30年以上昔のことです。
その日はある催しのために応援要員が大量に配置されていた駅で実習についていました。
私の師匠は他のベテラン駅員さんたちと外食へ行ったので、私は2つ上の先輩と近くのお店で昼食をとっていました。
食事が終わって駅へ戻ってくると地下通路内が大混雑しています。
今日の催しってこんなにたくさんの人が来るんだと思っていた私ですが
「お前!これ払い戻しできるんやな!」
といきなり胸倉をつかまれて怒鳴られました。
先輩がすぐに仲裁に入り
「はいはい、払い戻しできますから」
と適当にあしらってくれました。
改札にいた他の先輩駅員たちは
「電車がおかまをほったらしいで」
駅長室にいた助役は
「脱線したらしいわ」
ほかにも
「爆弾が仕掛けられていたらしい」
「電車が突然火を噴いたんやって」
などなど、いろんな話が飛び交っている状態でした。
やや落ち着いてから聞いた話が本当だったのですが
「踏切で乗用車と衝突して運行不能になった」
事故が発生して1時間以上が経過していたのでした。
乗務員は列車無線から流れてくる断片的な情報を自分でつなぎ合わせて理解しないといけませんが、断片的とはいえウソや噂話はあまり入ってきません。
ただお客さんから聞かれるであろう内容を把握しているのかというと疑問です。
それに対して駅勤務の場合はたくさんの情報を得ることができるはずが、ウソや噂話がかなり混じってしまうんですよね。
最近は会社によっては情報の出所を一元化してウソや噂話が入り込まないように情報携帯端末(スマホなど)を乗務員に持たせたり、駅にはパソコンを設置して正しい情報をみなで共有するような体制を敷いていることもあります。
ただその情報の発信が文字化するためかワンテンポずれてしまうこともあり得ますね。
鉄道の現場で長く働いてきましたが、情報がまともに入ってきたことって本当に皆無でしたよ。