運転指令

今回は運転指令のことについて少し触れてみたいと思います。

2017年12月11日に山陽新幹線において、床下からの異音や異臭に気付きながら名古屋まで運転を継続し、結果的に台車に大きな亀裂が生じており、航空・鉄道事故調査委員会により大事故の一歩手前だとする重大インシデントに新幹線で初めて認定された件を受けて書いていきます。

岡山から保守要員が乗車し運転指令に「次の駅で止めて点検したらどうか」と進言した。
しかし運転指令の判断で運転を継続し結果的に名古屋で運転を取りやめた。
このように報道されています。

 

新幹線に限らず、車掌や運転士をしているとよくこういう場面に遭遇しますよ。

車両の不具合があって車両部の係員が添乗してきます。
その時には乗務員からの意見も聞いてきます。
「このまま運転を継続できそうですか?」

私はだいたいこのように答えていました。
「車両の専門家としては運転継続は大丈夫だと判断しますか?」

すぐに支障はないと言えば、私もそのまま運転継続を希望します。
だって車両振替などになると面倒だもん。

しかし点検したほうが良いとか車両の振替をするほうが良いと言えば、もちろん同じように希望します。
私が勤務していた会社では、車両部の係員と一緒に列車区の助役も添乗してくることが多いので
「(運転)指令に点検や振替をするように要請してくれ」
と言ってました。

ところが運転指令の人間って、少しでも運転を継続させたがるものなのです。
こちらから要請しても
「車両部の係員を添乗させたまま運転継続」
って指令が出ることが本当に多いのですよ。

「マジかよ!」
ってブツブツ言いながら運転することも多々ありましたからね。

 

結局数時間走行してからその車両を他の車両に振替えるのですが、今度はなぜ車両を振替えるのかを知らされないまま乗務したりすることも多々ありましたよ。
運転指令にすれば、ある程度時間があれば振替える車両の手配もやりやすし、要員の手配や配置も楽ですからね。

 

 

 

 

それと運転指令は無線など声による情報しかありません。
気持ちの中にとにかく
“電車を止めたくない走らせたい”
そんな気持ちが先走ってしまい、声による情報を過小評価する傾向が強いのです。

 

声による情報を上回るもの、それは過去の痛い経験だけです。
運転継続を指示したばかりにその車両が運行不能になり、ダイヤがぐちゃぐちゃになってとんでもないことになった。
そんな経験を持っていれば、その時と同じ兆候だという声の情報が入った途端に先のことを考えて、運転取り止めの決断をすぐに下せるのですけどね。

 

 

今回の新幹線でも言えるのですが、台車に亀裂が入り危うく脱線の危険があったなんて、運転指令では想像できなかったのでしょう。
特に新幹線では大きな事故が過去にないので、まさか重大インシデントに認定されるようなこととは思わなかったのでしょう。
そこには現場の声を軽視し、とにかく走らせなければならないという思いが強い、運転指令の性(さが)が出まくったのかなと。

 

これは新幹線だけの問題ではなく、全ての鉄道の運転指令の問題だと思っています。

 

さらに言うならば、運転指令員なんて現場の状態(線路や信号、勾配や車両の特性などなど)を知り尽くした人で、且つ最低でもベテランの指令員の下で3年は勉強し、そのまま定年まで指令員を続けるくらいでないと務まらないと思っています。

でも現実には運転指令のポストは長くても5年ほどしか在籍しないことが多い。
大半は3年ほどで運転指令を退いていますから。

私も6か月しか助役をしていないのに、その間に72時間ほど運転指令の研修に付いて予備の指令員に指定されていたのですよ。
※幸いなことに指令の仕事には入らずに済みましたが。
※ちなみに72時間っていうのは24時間勤務×3、つまり3回研修に付いただけです。

 

運転指令員からよく聞いた言葉

運転取り消しという判断は簡単
ただその後の車両の手配、てこ扱い(ポイントの進路を手動で操作)も確かに大変
それ以上に報告書が大変
そして上(上層部)から運転取り消しを判断した理由や
運転継続は出来なかったのかとネチネチ言われて
それに答えるのが最も大変なんだ
下手したら勤務を外されて数日間言い訳ばかりしなくちゃいけないんだ

 

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