JR西では列車が立ち往生する中並行する私鉄は運行を続けられた理由
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JR西では列車が立ち往生する中並行する私鉄は運行を続けられた理由

あくまで個人的な意見

気象庁やマスコミからもさかんに、2023年1月24日の午後からは天気が大荒れとなる、10年に一度の寒波が襲来する、西日本でも大雪の恐れがあると繰り返し発せられていました。

実際に10数年に一度くらいしか積雪しない地域でも雪が積もり、各地で道路が寸断される状況に陥りました。

そのようななか鉄道にも当然被害がおよび、JR西日本は翌25日まで大動脈の京阪神間の輸送がマヒしてしまいました。

自然災害だから仕方がないと思う反面、並行して走行する京阪・阪神・阪急は遅れながらも運転を見合わせることなく運転を続けることができました。

 

 

融雪機の使用基準について

京阪神間をJRと並行して走行する各私鉄は、JRとは違って雪に対する知見は乏しいはずです。

JR西日本は北陸などの豪雪地帯も走っていることから、雪に対する備えは私鉄よりできていると考えるのがふつうです。

私自身が関西の私鉄勤務だったことから、JRは雪に対する心構えもきちんとできているだろうし、これまでの経験値が私鉄より豊富だろうと考えていましたから。

 

JR西日本のおそらく内規だと思いますが、10cm以上の積雪が見込まれる場合には融雪機を使用するとなっており、事前に得た情報では京都市内では8cmの予測。

つまり2cmも積雪が少ないから、融雪機は使用しなくても列車の運行には支障が出ないと判断した。

このあたりは内規に定められている通りに行動したとJR側は説明しているわけですが、実際には京都市内で15cmの積雪があり、積もった雪によってポイントが動かせなくなるポイント不転換が同時多発的に発生し、あちこちで列車が立ち往生したという最悪の結果につながったわけです。

各地域によって融雪機の使用の目安は違っているはずですが、この10cmという積雪の目安を大阪方面に適応すると、おそらく数十年に一度くらいしか融雪機の出番は無くなるはずです。

 

ところが並行して走る私鉄は遅れは伴うものの、24日は最終電車まで運行したし翌25日は始発から平常どおりに運行できています。

JRで立ち往生が多発した高槻から山科の間でも、阪急京都線や京阪京津線は運行していました。

融雪機を使用していたために、雪によるポイント不転換を起こさなかったので通常通りに運転できたわけです。

融雪機の設置基準や使用基準は各社で違っているとは思いますが、私がいた会社では積雪だけではなく、低温注意報が発令されている場合には融雪機を使用していたため、今回の荒天の場合は夕方には使用していたと思われます。

雪は降らなくても通常より気温が低くなれば、ポイントが凍結によって不転換を起こすおそれがあるので、低温注意報が発令されておれば融雪機の使用が指示されていました。

 

 

公休や非番も関係なし!非常呼出

JRでも同じような取り決めはあるとは思いますが、ここでは私がいた私鉄で行っていた非常呼出について書いていきます。

非常呼出の対象者は助役以上の監督者で、荒天が予想される場合には事前に非常招集されることがあると通告されます。

出番の監督者は通常任務を行いますが、それこそ今回の場合ですと融雪機の設置や点火、列車への添乗による警戒などは非常呼出で出勤した監督者がその任に当たります。

分岐器(ポイント)の管理は私の会社では駅が行うことになっていて、通常勤務者だけでは融雪機の設置や点火にまで手が回らないので、非常呼出による監督者が行います。

車庫のように分岐器が多数ある場所の場合は、監督者の呼び出しだけでは対応できないために信号士なども呼び出し対象となり、車庫信号所の本来の業務は出番の監督者のみで行い、信号士は出番の者と呼び出された者、そして呼び出された監督者によって融雪機の設置などを行っていました。

 

JRは山科駅は電気融雪機を設置しているのでスイッチ操作で使用できたでしょうが、京都駅など他の駅では係員が一つずつ設置していかなければなならないタイプで、これは私がいた私鉄と同じです。

要員を確保して事前に設置しておき、雪が降り出してからでも良いから使用すれば、ここまで広範囲に影響は出なかったはずなのですが。

※非常呼出については「電車屋さんだったころの話」で近日中に記事を書こうと思っています。いろいろとありましたからね。

 

 

立ち往生した列車から旅客を線路に降ろすという判断

今回のような雪害だけではなく地震や風水害に合うことも多いし、事故や故障なども当然ありえます。

そしてこれらが原因となって列車が駅間で立ち往生することが少なからず発生します。

そのたびに言われるのが、なぜもっと早く列車から降ろしてくれないのだという問題です。

今回JR西日本で駅間で立ち往生した列車は15本あり、最大で10時間以上列車に閉じ込められた旅客もいたというし、体調不良で救急搬送された旅客も16名に上ったという。

 

まず断っておきたいのは、線路上に旅客を降ろすという判断を下した場合、列車の運転再開を諦めたということになるのです。

線路上に旅客を降ろした場合はその人数と、最寄りの駅に避難した人数とが合わなければ運転再開はできない。

最寄り駅へ避難した人数が降ろした人数より少ない場合、どこへ避難したのかを確認できるまでは列車は運転再開はできません。

確認できない場合は線路上など列車の運行に支障がある場所にとどまっている可能性があり、事故回避の観点から必ず所在を確認しなければならないのです。

これが輸送指令(運転指令)が線路へ旅客を降ろすという決断をなかなか下せない最も大きな理由です。

 

また今回の場合は夜間で積雪があり、無闇に線路上へ降ろして歩かせるのも危険だったこと、普通列車や快速列車などは旅客数のわりに乗務員の数が少なく、避難誘導する要員が少なすぎると判断し部分もあるから、まずは不転換となったポイントの復旧を優先させるという判断を下したのではないかと思います。

それならば最徐行で駅のすぐ近くまで列車を移動させればよいわけだし、場合によっては退行運転(バック)も考えればよかったわけで、駅間で立ち往生している列車の本数とその位置は把握できていたのですから、後方の安全を確保したうえで退行運転すれば省令等に違反することなく対処できたはずなのですよ。

先行の列車が駅に停車したままだったすれば、無閉塞運転で極力停車した列車に近付けて停車させれば、線路内を歩くにしてもかなり短い距離で済んだはずですし。

 

サンダーバードなど特急列車の場合はほぼすべての旅客が座席に座れていたと思いますが、普通列車や快速列車の場合は立ったままの旅客も多いわけで、立ち往生から1時間程度で判断する必要はあると思います。

 

縦割りすぎる体質なのかも

融雪機の設置や使用について、そして立ち往生した列車からの避難について、この二点が今回特に問題となりました。

他に考えられることとしては、当初予想されていた積雪量を超えたために融雪機の設置や使用を行わなかったのに、列車を通常通り運行しようとした判断ミスもありました。

また山科から高槻にかけての降雪量について、各駅付近での降雪状況をどのように確認しようとしていたのかも疑問です。

私がいた会社では非常呼出で出勤した監督職を中心に、とにかく列車に添乗させては各区間の状況を報告する体制を取っていました。

鉄道会社は気象情報を提供する会社からデータを購入していますが、それ以上に生で今の状況を確認して報告するというライブのデータの方が大事ですし、そちら重視していました。

添乗する係員は駅や乗務などの監督職だけではなく、電気や工務や通信などあらゆる部門の係員がひっきりなしに添乗しては状況の確認にあたっていました。

監督職や管理職のいる駅から降雪や積雪に関する情報が輸送指令に届いていたのか、そもそも駅などで雪の状況を適宜確認していたのかも疑問です。

私がいた会社では駅の助役クラスが管理駅へ、悪天候時には長くても30分ごとに状況を報告していたし、運転指令側からも適宜各管理駅へ状況確認の電話を入れていたのですが。

 

それらから総合的に判断して輸送指令(運転指令)が最終判断を下すわけですが、今回のような異常時には必ず運輸・輸送部門のトップが運転指令室に足を運び、指令員や指令長に対して口を出していました。

指示を出すのは最終的には輸送指令(運転指令)ですが、運輸・輸送部門のトップが後ろ盾となることで、思い切った指示を出すことができます。

今回のような大規模な災害になると、指令長、駅長、乗務区長など現場のトップの指示がかなり重要になるのですが、これらの人の後ろ盾として運輸・輸送部門のトップが腹を括ることがもっと重要になってきます。

立ち往生した列車の車掌や運転士からは乗客を降ろすべきと輸送指令に訴えたものの、故障したポイントの復旧を優先させたい輸送指令の思惑が勝ったわけですが、この時に運輸・輸送部門のトップが指令室にいて、「旅客の安全を最優先に考えた行動」を求めていたら、結果は違ったかもしれません。

施設系の係員が添乗などによって状況を把握し、事細かく報告していたら結果は違っていたかもしれません。

よく運転指令からは、役にも立たない運輸・輸送部門のトップが来て口出しをしてくるなんて悪口もよく聞かれましたが、トップが来たことによってその責任の大部分を押し付けることで、思い切ったことを指示できるという面もあるのですけどね。

 

各私鉄は今回の雪に対して、数センチの積雪しかなかった地域でも融雪機を使用していたことでしょう。

私鉄でも内部では、縦割りの組織で硬直化しているなんて言い方をよくしていましたが、JRは完全に規則一辺倒で組織自体も硬直化した縦割り組織が出来上がっているから、今回のような完全な後出しじゃんけんなのに負けて、翌日以降にもその負けを引きずってしまったのではないか、そんな気がします。

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