駅や乗務の現場でも労働組合の役割が見えなかった
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駅や乗務の現場でも労働組合の役割が見えなかった

あくまで個人的な意見

良いか悪いかは別にして、昔はストをちらつかせて賃上げを求める春闘が風物詩でした。

実際にストライキに突入することも多く、利用者には多大な迷惑を掛けたのもまた事実です。

ストが活発だった時代は私はまだ生徒・学生でしたから、ストによる臨時休校がうれしくて、よく線路内を遠くまで歩いたり、鉄橋を恐る恐る渡ったりしたものです。

でも今の労働組合に昔のような気概なんてなく、乗務職場でも労働運動なんてほぼ壊滅しているようにしか感じません。

 

 

ストの経験がほぼありません

私が関西の某私鉄に入社したのは1981年(昭和56年)で、この年の春はストに突入したようです。

実は私はまったく記憶になく調べてみて分かったことなのですが、4月22日にストの突入しているようで、この時期の私は新入社員として教習所で見習生活をスタートしたころで、正式な社員でもなければ労働組合員でもない、本当に宙ぶらりんな身分だった時。

そういえばと思い返しながらその当時の手帳をめくってみると、お休みとなっていました。

おそらくスト突入によって電車が動いておらず教習所へ通う手段がないことや、教習所で授業を行う人たちも労働組合員なので同じようにストを行うために、事前に本社あたりの指示でお休みとなったのだと推察されます。

その後も駅勤務や車掌時代に少しだけストに突入したことがありますが、私自身はまったく影響を受けることがなく、ストというものはどのようなものなかを味わうことは一度もなかったです。

 

ちなみにストに突入すると、その時間分の給料がカットされます。

会社にすれば働いてもいない人間に給料を出すわけがなく、労働者側にすればその後は賃上げに繋がるかもしれませんが翌月の給料の手取りが減るわけですから、このままでは労働者側からストを回避しろとの声も出てきそうなもの。

実は労働組合は毎月組合費のほか、臨時組合費とか特別組合費の名目でかなりの金額が天引きされており、その中から闘争資金としてプールしているお金があり、ストによって減らされた給料を補填する仕組みになっていました。

昔なんて48時間とか72時間のストライキが行われることが多く、その分の基本給や手当がカットされれば生活が大変です。

このために労働組合がその損失を補填できるように、闘争資金というお金を積み立てているのです。

どういう計算でもらえるのかなど、私はストに関する経験がほぼ0なので詳しくは分かりません。

一度くらいはストというものを経験してみたかったのですが、それは叶うことはありませんでした。

 

 

まったく盛り上がりを見せない春闘と職場

昔の鉄道業界って春闘では労働運動を引っ張る役割を果たしていたと思います。

鉄道が止まると会社へも学校へも通うことができず、社会全体がマヒ状態に陥ります。

だから昔は私鉄の春闘の交渉状況をニュースで取り上げることが多く、よく100円玉の攻防なんて伝えられていました。

ところが今の春闘ではトヨタ自動車の労使交渉が真っ先に伝えられ、その後にいろいろな業種の状況が伝えられますが、私鉄の春闘の妥結額がニュースで取り上げられることはありません。

ストをしなくてもニュースで妥結額を知ることができた昔と比べ、いまは出社してから小さなビラを労組の職場委員から受け取ってから知るのです。

裏面にはいつも同じような文言が並んでいました。

〝ストを決行してでも要求額に近付ける努力がほしかった〟

労組の職場委員や労組の支部の専従者たちがいつも同じような文言を書いていると思うのですが、その言葉を見るたびに、初めからやる気がないのに終わってからポーズを取って取り繕っているだけとしか思えませんでした。

 

昔は乗務区の休憩所にびっしりとストに対する意気込みを書いた紙が貼られていたのですが、年々減少していき昔の1割ほどの紙が一ヶ所にまとめて貼られているだけ。

労組系の人たちがこの程度ですから乗務職場のその他の人間も初めから期待などしておらず、妥結額を知ってもうれしくも悲しくもなく、ちょびっと基本給が上がってその分税金と社会保険が上がって、手取り額は今までと同じか下手すれば下がるだけだな、としか思えないのですから。

というよりも、昔は関心が無くても自然と春闘の情報が入ってきたのに、今は自分から情報を探さなければ春闘をやっているという雰囲気も味わえない状態に陥っています。

 

だいたいが国に賃上げを要請されて、それではいはいと聞く経営者が多いのですから、どこにも労働組合の存在感を発揮できる場所がないのですけどね。

 

 

組合という名の出世コース

私がいた会社では駅長や乗務区長など、現場上がりの人間で就くことができる上位職のポストは、ほぼ労組関係者ばかり。

その多くは職場委員から各職場(運輸部門だと乗務区や駅管区)の労組のトップ(班長)を務め、さらにはその上の支部(運輸だけではなく車両や電気など施設部門も含む)の支部長や副支部長として組合専従を行い、その後に現場へ復帰して駅長や乗務区長になります。

たまに組合系ではない人も就くのですが、それはあくまで〝つなぎ〟なので長くても2~3年で異動し、〝本命〟の組合出身者が長くその地位にとどまることが多い。

 

よく別業界に勤めていた知人に聞いたのですが、労組のある会社の場合、職場委員は2年交代で順番に回ってくるそうなのですが、どこの会社でもそんな感じですか?

私がいた会社では職場委員はその時の班長が指名し、基本的には会社を去るまで労組の看板を背負って生きていきます。

一応は職場委員は選挙で選ばれるのですが、班長が推した人以外が立候補することは稀でした。

たまに職場を変えると言って個人で立候補する人や共産党系の人もいましたが、現職の職場委員たちが裏で動いて票固めを行い〝組合公認〟の人以外が当選することはなかったです。

駅長や乗務区長などの管理職は労組から抜けますので、会社にいながら労組を抜けるには出世以外に方法はありません。

※乗務員から助役などの監督職になっても労組からは抜けません。ただし乗務員や駅員と監督職では別の塊とみるので、職場委員はそれぞれ別に選んでいます。

 

今の駅がどのような状況なのかは分かりませんが(何せ駅にいたのは昭和50年代ですから)、乗務区で班長から職場委員に初めて指名されると決まって〝あいつは出世を選んだのだな〟なんて後ろ指をさされる状態。

中にはその指名を断る人もいるのですがそれもなかなか大変なようで、家にまで班長や支部長がやってきて受諾するように迫られたりもしますから。

そういえば個人で職場委員に立候補しても、立候補を断念するようにと家にまでやってきて迫られるそうですし。

決められた人だけが職場委員になることができて、そして出世できるというシステムが確立していました。

そのことを班長や支部長に聞いたことがあるのですが、その答えはいつも、

「組合活動をしているからと言って出世できないのは問題だから」

そうではなく、組合活動をしていないと出世できない今のシステムがおかしいから聞いているのですけど。

 

 

労組が機能していない

駅長や乗務区長といった現場のトップは基本的に労組出身者で固められていることを書いてきました。

本来ならば労組での経験を生かして、駅員や乗務員が仕事をしやすい環境づくりに一肌脱ぐことが期待できるはずなのですが、現実は真逆です。

駅長や乗務区長が元班長や支部長だったということは、現在の班長や支部長がまだ職場委員クラスだったころに班長や支部長を務めていたことが多く、交渉事でも軽くあしらわれるケースが非常に多いのです。

たとえば電車屋さんだったころのころの話 Ⅰにも書いているのですが、乗務中の熱中症対策として水筒を所持しての乗務を認めなかったのも、班長出身の乗務区長でした。

この時の現職の職場委員や班長が乗務区長に認めるようにと再度交渉もぜず、ダメと言っているから無理ですとの見解で全て終わってしまいました。

労組って賃金面だけではなく、労働環境の改善を会社側に迫る役割もあるはずなのですが、まったく動く気なし。

これでは労組が機能しているとは言えません。

 

他にもいろいろとありましたよ、労組がまったく機能していないことが。

例えば乗務中に何らかのミスを犯したとします。

もちろんミスを犯した人が最も悪いのですが、反省してもらって教育し直して再起させようなんて全く考えず、とにかく乗務職場では君の働き場所はないと強く異動を求めることが多い。

別の部署に異動しますと乗務員が言うまで勤務を外されて〝日勤教育〟が続く。

狭くて窓もない乗務区の監督職や管理職がいるすぐ横の会議室に一日中閉じ込められて、朝から夕方まで延々と……

これ以上認めなければ精神がおかしくなると思って、しぶしぶ移動を認めてしまう乗務員が多いのですが、決まって班長や職場委員は口にします。

「本人が異動しますと申し出ているので、組合としては止めることはできない。ただ異動する部署については本人が務めやすい環境をお願いしています」

 

そういえば一度私鉄総連からの組織内候補として参院選に立候補するという人が、私がいた乗務区の休憩所にやってきました

私鉄総連って昔は社会党、今は立憲民主党の支持母体の一つとなっていて、私鉄総連が擁立するということは今ならば立憲民主党の候補ということになります。

やってきたのは休憩所であり、乗務員が束の間の休息を取っている場所です。

私をはじめ多くの乗務員は普段通りに座って、普段通りにコーヒーを飲み、普段通りに話をしています。

当然ですよ、休憩時間なのですから。

その様子を立候補予定者と同行していた人が組合支部長に対して、

「おたくの乗務区だけですよ、起立することもなければ挨拶をすることもない職場は」

すると支部長は班長など職場委員に対して、

「俺の顔に泥を塗りやがって!」

と激怒したとか。

昔と違って休憩時間が削られた上に乗務量が増えているのですから、次の乗務でミスをしないようにゆっくりするのは当然なのですが、組合の支部長はそんなことより自分の地位や立場の方が大事なようでした。

労働組合の支部長が労働者よりも自分メンツの方が大事だなんて、それこそ労働組合が機能していない表われです。

ちなみに、監査で本社の重役やや国交省の役人が乗務区の休憩所にやってきた時には、班長をはじめ職場委員は、

「休憩場所にやってくるのだから、乗務員に起立などを強いるな!」

と、監督職に偉そうに言っていたのですけどね。

 

他にもいろいろとあるのですよ。

給料やボーナスのカット、手当の消滅、乗務量の増大などの会社の提案に対して、みんなが反対していたのに労組の本部の人たちが会社側の代弁者となって、賛成しろと迫ってきたこととか。

組合専従者と現場で監督者をしている人とでは、同じ勤続年数だと組合専従者の方がはるかにたくさん給料をもらっているとか。

ストなんてまずするはずがないのに、私が会社を辞める時点では闘争資金をまだ積み立てているとか。

入社以来一度もストなんて経験しておらず、積み立てた闘争資金は使われていないはずなのに、いったいどの程度の金額になっているのかも教えてくれなかったし、使わなかった闘争資金相当分が返すことができないとか、過去にも退職していった人にも変換していないから今後も返還することはないとか。

労働組合の存在意義もその役割も見えないまま今に至っています。

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