香川県を走る高松琴平電鉄(ことでん)で、踏切が動作していない状態で列車が通過する事案が21年1月~22年2月の間に3件発生。
四国運輸局は22年2月にことでんへ文書警告を出した。
22年4月にも同じような事案が発生したために、この4月の事案も踏まえて再発防止策を四国運輸局へ提出。
ところが今年4月に再び発生したことで四国運輸局は保安監査に踏み切って6月30日付で改善指示を出し、7月末までに再発防止策の報告を求めていた。
このようなさなかの7月13日に再び発生。
7月13日の事案では上り列車の運転士が踏切不動作に気付かず時速60キロほどで通過、7分後にどう踏切に差し掛かった下り列車の運転士が不動作に気付いて踏切手前で停車した。
上り列車の運転士は次の停車駅に止めるために、ブレーキ操作と場内信号機の確認に気を取られていたので、踏切不動作には気付かなかったようです。
ことでんでの踏切不動作事案は2015年以降16件発生していて、そのうち3件は運転士が気付かずに踏切を通過していた。
簡単に言えば設備の老朽化や点検不足が主要因ですが、7月13日の事案では2020年11月の複線化工事の際に機器類を一新しているため老朽化とは言えないようです。
ただ耐用年数が10~15年とされているヒューズを40年ほど使い続けていた踏切もあり、ひょっとすると一新したとはいえ一部の機器やコードなどが使い回されていたということもあるのかな?
私は電気関係の仕事に従事していたのではないので詳しくは分かりませんが。
ただ地方のローカル私鉄だとそういった費用を捻出するのも厳しいでしょうから、何らかの支援がなければいろいろと難しいのかなとも思いますが。
踏切不動作にもかかわらず運転士が気付かずにその踏切を通過していたとありますので、こちらについて書いていきます。
私は駅・乗務員出身ですから。
踏切が動作していることを確認する術としては、踏切動作反応灯(踏切動作表示灯など会社によって名称が違う)の点灯や点滅を確認するというものがあります。
会社によってかなり表示灯の形が違うようですが、踏切が正常に動作して遮断桿が降下しておれば点灯または点滅するようになっています。
踏切動作反応灯は踏切の手前に設置されていますが、これは旧国鉄以外の鉄道には必ず設置されています。
「自動踏切遮断装置の構造基準」(名称は合っていたかな?)という省令が大昔にあり、この省令は国鉄以外の鉄道事業者に対するもので、この中で踏切動作反応灯の設置が義務付けられていました。
その後この省令は無くなり、今は「鉄道の技術上の基準に関する省令」に踏切の関する決まりが書かれていますが、踏切動作反応灯の設置は義務化されておらず、別に無くても問題はないという位置付けになっています。
なのでJRをはじめ第三セクター鉄道などには踏切動作反応灯はほとんどありません。
私鉄においても無くても問題はまったくありませんが、今まであったものが急に無くなるとなると、それはそれで混乱しそうですから当分は保守点検をして存続していくでしょうね。
私は私鉄で運転士を26年間ほどしていましたが、踏切動作反応灯の点灯や点滅は運転士の確認事項には入っておらず、極端に言えば見る必要もないという位置付け。
でも前方を見ていれば視界には入ってきますから、漠然と見ていたというのが本当のところでしょうか。
もしも点灯や点滅していなければ、いつもとなんだか様子が違うような……程度には気付くかもしれないですね。
本当にその程度の位置付けでした。
踏切の動作異常や遮断桿の折損については気が付けばもちろん報告しますが、停車駅に接近している時や軌道内に作業員がいるときなどは、どうしてもそちらに意識が集中するので気が付かないことが多くなります。
夜間は踏切動作反応灯の明かりや警報機の赤い点滅する明かりがよく分かるのですが、日中は電車側からは分かりにくい。
特に昔の踏切警報機の警報灯は道路側に向かって点滅するように設置しているから、運転士からは分かりにくかったです。
最近の警報灯は360度どこからでも分かるような形状になっているので、運転士からも分かりやすいでしょうね。
ちなみに私がいた私鉄では、踏切が故障した場合など不動作となっている場合に、すぐに運転士に知らせるような装置はなく、踏切動作反応灯が消灯していることで知る程度でした。
また「故障」といった表示を自動的に出すような装置もありません。
最近は踏切の不動作をはじめ、遮断桿が規定の降下位置より高い状態で止まっている場合には、運転指令のモニターに警告表示が出るという会社もあると聞いたことがあります。
それで自動的に停止信号を出すとか、障検用の特殊信号発光機を明滅させる装置になっているのかもしれませんが、大多数の会社では運転士の注意力に頼り切っている状態なのかもしれません。
X(旧Twitter)で踏切動作反応灯は普通は指差確認呼称の対象と思うなんて書いてありましたが、何に対して呼称・喚呼をするのか、何に対して指差を行うのかは各事業者や各乗務区ごとに決めていること。
自身が勤めている会社で行っている動作がすべてであるとの考え方は間違いです。
そもそも指差なんて私がいた会社をはじめ、関西の私鉄では以前はあまり行っていなかった。
ブレーキハンドルから手を離すな!
というのがその理由です。
確認しなかったらなんの為についている装置なだろうかって、これは本文に書いている通り、省令によって設置義務があったから設置されて、今では設置の義務がない装置。
ちなみに私がいた乗務区では場内・出発信号機のほか進路予告機が付属している閉塞信号機、入換信号機に対しては指差喚呼を行うようになり、その他の閉塞信号機は指差なしで喚呼のみ。
あとは停車通過や編成両数の確認で喚呼をする程度で、その他は喚呼は行いません。