JR九州の九州新幹線・鹿児島中央駅で新大阪行きの「さくら558号」が、発車直後に異音を認めた車掌が緊急停車させた。
最後部の車両にハンスコが取り付けられていて、踏み砕く音に気付いて車掌が非常ブレーキスイッチを操作して止めたのでしょう。
木製のハンスコだったので割れたために脱線や車両故障には至らず、19分後に運転再開したものの熊本で運転打ち切りとなったようです。
ハンスコは車両を留置する際に施行するもので、非常ブレーキが入っているものの何らかの拍子でブレーキが抜けて転がっていくことを防止するために使います。
JR九州を含め私が勤務していた会社以外ではどのような基準で施行するのかは分かりませんが、私がいた会社ではホームに停車中の車両にハンスコを施行する基準として、パンタグラフを降下させて留置している時となっていました。
1~2時間後に使用する場合などはパンタグラフを降下させずに留置するため、ハンスコは使用しません。
臨時列車を担当した時によくあったのですが、30分間だけどパンタグラフを降ろして留置する指示が出た場合には、ハンスコも必ず施行していました。
パンタグラフが降りている=ハンスコが施行されている
ちなみに車庫ではパンタグラフが上がったままであってもハンスコ施行が原則で、入庫した番線によってはハンスコ使用禁止となっている個所もある、そんな感じで運用されていました。
それと会社によってはハンスコ使用中は運転台に「手歯止使用中」などと書かれた札を掲示したり、線路内に立てて掲示することもあるようですが、私がいた会社では基本的にはそういったものは無く、夜間のホーム留置となる車両の場合には駅の係員が運転台に、手歯止めを使用していることが書かれた紙片が置かれてはいました。
今回のJR九州・九州新幹線の件では、隣のホームに到着した列車の運転士が施行したと報じられています。
わざわざ自身が担当しない列車に対してハンスコを施行するという意味が分からないのですが、ひょっとすると
「ハンスコをし忘れているんじゃやない?」
と妙に気をまわしたための事故だったのかもしれません。
まさか自分が担当してきた列車と間違えてハンスコを施行したとは考えにくし。
自分が担当していない列車に対してハンスコを施行することは絶対にありませんでした。
知らない間に施行されて、施行されている事実を知らなければ今回のような事態を招きますからね。
でも逆にハンスコを外しておくということはしていました。
乗務区のある駅から便乗でやってきて、駅に留置している車両を担当するというケースの時ですが、便乗で到着してから列車を動かすまでの時間って意外と短く、もちろん点検をする時間は取っているのですけど、でも真冬や真夏の場合はこの正規の時間では真夏はクソ暑いままだし、真冬は底冷えした状態で列車を動かすことになります。
そこで別の列車を担当する乗務員がパンタグラフを上げてハンスコを撤去し、空調をあらかじめ入れておくということをしていました。
あくまでおたがい様で勝手に行っていることなのですが、この時にはハンスコを他の乗務員が撤去を行っていました。
本当はダメなのですけどね。
たまにパンタグラフを上げて空調を入れるのだけど、ハンスコの撤去のためにホーム下に降りるのが面倒とのことでそのまま施行状態ということもありましたが、その列車を担当する運転士は必ず目視でハンスコの状態を確認し、撤去されていることを確認してから運転台に置かれた「手歯止使用中」などと書かれた紙片を捨てていましたから、施行したまま走り出すようなことはありませんでした。
だいたいが本当は自分自身が行うべき作業を他の乗務員が親切心から行ってくれているだけなので、もしもハンスコを施行したまま走り出したりすれば、その親切心から作業を行ってくれた乗務員にも迷惑が被りますしね。